『仮面ライダー響鬼』二十九之巻「輝く少年」

万引き少年に殴られて傷付いた明日夢に、自分の考えを伝えるヒビキさん。人生は失うことばかりじゃない。正しく生きていても傷つけられることはある、そうして傷付くたびにまた這い上がるためには、心を鍛えておかなければいけないと。そこに迫力も感動もあるのだが、いつにない雄弁さに、ここで全ての思いを伝えておかなくてはならないという、打ち切り漫画の最終回にも似た性急さも感じた。一之巻のシチュエーションを反復する構成は、物語の現在位置の確認ではなく、作品そのもののリセットではなかったかという不安。事実来週からは脚本に井上敏樹が加わり、明日夢のライバルらしき少年が登場し新展開を迎えるのだが、願わくばこれまで積み重ねた土台の上に、新鮮な刺激を加えるものであってほしい。もっとも、今回が実質的な最終回だったとしても、威吹鬼轟鬼・鋭鬼が三人掛りで仕留められなかったヨロイツチグモを軽々と撃破し、陽炎のなかに佇む響鬼紅の神々しいまでの勇姿は、明日夢とともに視聴者の胸にも刻まれただろう。そこには現在のヒーローものの最高の達成があったと言っていい。
……てなことが杞憂だったと後々笑えるようになっていればイイナ!