STEVE REICH/DRUMMING('87)

ブックオフにて1000円で購入。スティーヴ・ライヒ71年の作品を87年に録音したもの。約1時間の楽曲は4部に分かれ、1部が複数組のボンゴと男声、2部がマリンバと女声、3部がグロッケンシュピールと口笛とピッコロで演奏され、それらが4部に至って合流する構成となる。周期の異なる単純な旋律が時に同期し時にずれながら重なり合って描き出す、複雑なモアレ模様。最小限の色彩で描かれた音のグラフィックは思いのほかカラフルだ。そこに楽器のフレーズを模した声が加わり、各部は境目なしに連結して表情を緩やかに変えていく。何よりも歯車のようなフレーズの連動が時間を加速させる疾走感と、否応無しに身体を揺り動かす強力なグルーヴが心地良い。聴きながら思い出すのはマニュエル・ゲッチングやゴング、マグマ、80年代のキング・クリムゾンといった、反復のもたらす快感に自覚的な一部のプログレッシヴ・ロックだが、それは逆で、ライヒがそれらの音楽にいかに影響したかの証左であるのだろう。特にジャーマン・ロックを通じた電子音楽への影響は計り知れない。また、ライヒが作曲にあたり参照したアフリカ音楽という共通分母からは、例えばサニーアデの反復ビートが生む魔術的なグルーヴが想起される。静的な鑑賞の対象とするよりも、トランシーなビートの波にひたすら身を委ねるのが楽しい。