『仮面ライダー響鬼』二十二之巻「化ける繭」

ウブメとヤマアラシが混じり合った合体魔化魍「ナナシ」(「超獣」的なブサイクさに味がある)に対し、三人の鬼は同時音撃で清めの音を共鳴させる。この「共鳴」が「合奏」であると予想して、バラバラの演奏に期待を外されたと感じた視聴者も多かったようだ。考えてみると訓練もしていないその場の「思い付き」(ヒビキさん談)で「合奏」になるはずもないのだが、リズムもコードもズレながら一斉に鳴らされる音の塊にはそれ相応の迫力があっただろう。鬼それぞれの音をカットごとに拾ったのは分りやすい演出だが(イブキさんのトランペットのミニマルなフレーズが良かった)、単なるカットの切り返しだけでも通じた。ていうか「もっとクリムゾンみたいに演ってくれ」。
それでも思わずボリュームを上げる見せ場ではあった。何しろ実に久しぶりのヒビキさんの変身、しかも若い鬼たちのピンチに満を持して登場する頼もしさ格好良さに痺れる。その直前まで、メモ帳を取り落とした言い訳に「生きてるよ!」とか、アトムのおやっさんの「ウルルン」ナレーションの物真似をしていた人とは思えない。この落差がヒビキさんならではの魅力。
ヒーローとしての戦いの裏で、ヒビキさんや猛士の人々が地元に溶け込んでいる様子や、急病に倒れた老婦人に接しての明日夢のさりげない成長ぶりを見せる。本来ならヒビキさんと医者の到着を待つより、明日夢が救急車を呼ぼうとする描写(それを「いつものことだから」と老婦人が止めるとか)があったほうが自然だったかも。その明日夢を見つめる「チアのもっちー」の目の輝きと来たら……いやいいです別に。ヤマアラシ童子の針に倒れながらも、轟鬼に武器を渡そうとにじり寄るあきらの胸チラもとい健気さ。ヒビキさんの救援の知らせに依頼心を見せる若手の鬼たちに対し、しっかりと釘を刺すザンキさん(その後のトドロキさんとの会話は腐女子の餌ですか)などなどキャラクター描写も万全。夏の赤鬼祭りに向けて余念がないのであった。