松任谷由実『OLIVE』(79年)

三鷹パレードにて4枚1050円の1枚。ファッション雑誌の表紙を模したジャケットの堂々たる押し出しとは裏腹な、内容の地味さに軽く驚く。冒頭の60年代回顧ソング「未来は霧の中に」を筆頭に、過ぎ行く青春への追憶を歌う歌詞の多さと、どのアルバムにも数曲あるアッパーな16ビートの曲が入っていないせいかもしれない。代って目立つのはカリビアン風アレンジで、そのうち2曲は細野晴臣の演奏と編曲になる。なぜこの時期に細野がセッションに参加したのかは謎だが、ユーミンスタンダード「冷たい雨」のマッスルショールズ風スカバージョンなどはさすがの仕上がり。細野・松任谷正隆林立夫とティンパンの3人が参加しているが、この時期ティンパンはすでに消滅していた。細野は林ではなく高橋幸宏とリズム体を組んでいるし、ギターは林とパラシュートを組む松原正樹と今剛だ。何より鈴木茂の不在が寂しい。実はティンパン・サウンドのシンボルは茂のギターだったかと思える。
と、サウンド・楽曲とも地味めではあるのだが、気持ち良く感傷に浸らせる佳曲が揃う。結婚後「守ってあげたい」がヒットするまでの70年代後半は、ユーミンにとって雌伏の時ではあったか。ところで「最後の春休み」はいい曲なんだけど、歌エンド「最後の、春やす、みーーーーーーーーーー」の「みーーーーーーーーーー」で吹いた。もうユーミンの物真似をする清水ミチコの姿しか頭に浮かびません。