購入メモ

吉祥寺RAREにて100円レコード×7枚。
BRAND X/LIVESTOCK('78)
ジェネシスでヴォーカル兼任となったフィル・コリンズが、ドラマーとしての超絶テクニックを存分に発揮する場所でもあったブランドXだが、元々の職人気質なのか、その音楽は良く言えばクールで渋く、悪く言えば熱に欠け地味。スタジオ盤では前者の美質が光るが、このライヴ盤は後者の印象が勝る。しかもフィルは多忙ゆえか5曲中3曲の参加、おまけにゲストドラマーのケンウッド・デナートが叩いている曲のほうが格好良い(笑)。
POPOL VUH/TANTRIC SONGS('79)
原題DIE NACHT DER SEELE。ポポル・ヴーの中心人物フローリアン・フリッケはドイツ電子音楽の草分けでもあったが、後に生楽器に傾倒し、本作もピアノ、ギター、オーボエシタール、タンブーラといった編成になっている。旋律の抑揚は禁欲的に抑えられ、シタールの通奏音の上に木管がテクスチャを重ね、穏やかに反復するギターの奥でピアノが深く響き渡る。仏教の唱名ともグレゴリオ聖歌ともつかないコーラスが神秘性を否が応にも高め、ニューエイジ的な癒しとは程遠い、心の奥の孤独な暗がりへとこの音楽は連れていく。それだけに最後に訪れる日だまりのような暖かさに救われたような気分になるのだが、このテクニックは洗脳に似ているような。
MOUNTAIN/NANTUCKET SLEIGHRIDE('71)
ギター&ヴォーカルのレズリー・ウェスト、ベース&プロデュースのフェリックス・パパラルディの双頭バンドであるこのマウンテン、米国産なのに非常にブリティッシュ臭い。ファンキーな定数倍のリフ攻撃というハードロック要素と、ドラマチックな曲構成やメロトロンといったプログレ要素が、アルバム単位でも曲単位でも共存している。思えばこの頃のロックって、ZEPにしろユーライア・ヒープにしろジェスロ・タルにしろ、ハードロックとプログレの区別はほとんどなかった。ジャンルや様式が先にあったわけではないのだ。いや格好良いすよ。しかし「山」というバンド名は考えてみると凄いな。
GENESIS/THREE SIDES LIVE('82)
ライヴ盤2作目"SECONDS OUT"('77)ではまだピーター・ゲイブリエルという「不在の中心」を意識していたジェネシスも、このライヴ盤3作目ではすっかり3人体制が板に着き、自信に満ちたパフォーマンスを展開している。フィルの張り出した高音ヴォーカルと、チェスター・トンプソンとの壮絶なドラムバトル(タム回しのまあ気持ち良さげなこと!)、トニー・バンクスシンセサイザー津波が、この時期のジェネシスのライヴの音楽面での魅力になるのだろう。それはそれで大変に説得力がある。かぶりもの時代はなかったことにするが吉。とはいえクライマックスはIN THE CAGE〜CINEMA SHOW〜SLIPPERMENというゲイブリエル時代の旧曲メドレーだったりするあたりが、ジェネシスにかけられたプログレの呪いなのだろう。
GINO VANNELLI/NIGHTWALKER('80)
ジノ・ヴァネリはカナダ出身のサウンド構築に優れたAORシンガー・ソングライター。ジャズやR&B色の濃いサウンドは、ドラムのヴィニー・カリウタをはじめとするメンバーの超絶技巧も手伝って、時にプログレジャズロックに接近する過剰さを見せる。70年代の作品のほうが抑制が効いていて良かったとは思うが、ドラム好きの人にはヒットかも。
SEA LEVEL/ON THE EDGE('78)
オールマン・ブラザーズ・バンドのメンバーたちによって結成されたバンドだが、サザン・ロックという言葉から連想する土臭さよりも、アヴェレイジ・ホワイト・バンドにも似た白人R&B/フュージョン的な洗練が際立つ。泣きのブルース・ギターやスライドに、クラヴィネットが唸るファンク・リフが絡み付き、ニューオリンズ・ファンクやラテン・フュージョンの色も覗かせる。アメリカ南部に根ざした多様な音楽性の混ざり具合と洗練度に、後期のリトル・フィートを連想した。これは拾い物でした。
JUGANDO『SAMBA KATHY』(80年)
ヤマハのコンテスト出身の、サンタナ/高中風味なラテンロック/フュージョンバンド。出自・音楽性ともども当時の楽器少年たちの一典型という感が強い。上田力が編曲と作曲、清水靖晃が演奏で参加。冒頭の「とりあえずサンバ」はid:maschineさんのイベント*1でDJの吉沢さんがかけていた。この曲はじめなかなか悪くないのだけれど、惜しむらくは中心人物でギタリストの古屋雅之によるヴォーカルの弱さ。「普通に上手い」歌手がバンドにいたら、もう少し歴史に名をとどめたのではないか。

*1:id:marron555:20040924#p2