今、ブックオフが熱い!

かどうかは知らないが、うちの近所のブックオフの洋楽コーナーが、しばらく見ないうちに不思議な充実振りを示しており。もうそのへんの中古レコ屋より全然掘り甲斐がある。もうレコミンツレコファンまで行かなくていい! 少なくともRAREはいらない。で、750円ワゴンで2枚購入。
THE VERY BEST OF K.C. & THE SUNSHINE BAND('98)
かのディスコ・バンドの73〜83年に発表された代表作が収録されたベスト盤。もちろんGET DOWN TONIGHTもTHAT'S THE WAY(I LIKE IT) もSHAKE YOUR BOOTYも入っている。全曲のプロデュース、作編曲を手掛けるキーボードとヴォーカルのKCことHARRY WAYNE CASEYと、ベースのRICHARD FINCHのコンビがこのバンドの実体だ。フィンチの素晴らしいベースリフ以外に特筆する要素はないのだが、むしろ歌手としてのKCの力量や、フィンチ以外のプレイに期待しないところに、サンシャイン・バンドの思想性皆無なメカニカル・ディスコの出発点があったのではないか。味もそっけもないKCの歌と無意味な歌詞はバンドの部品に徹してほとんどインストに近い。ただし75〜77年をピークにファンク度は減退し、よせばいいのに歌をフィーチャーしてライオネル・リッチー化が進行、正直聴くのが辛くなっていく。まあ冒頭の3曲があれば充分だが。唯一80年代のヒット曲GIVE IT UPのイントロは、爽やかなギターの音に一瞬ハイライフ(西アフリカのダンス音楽)かと思いました。

PETER HAMMIL/THE SILENT CORNER AND THE EMPTY STAGE('74)
ピーター・ハミル3枚目のソロ作。歌詞もクレジットもないUK盤だが、ネット時代に何の不自由もない。彼のバンド「ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレイター」の全メンバーが参加しており、音はVDGGそのものだが、よりハミルの個人的な心象が反映しているということでソロ名義なのだろう。
拙い英語力で内容を理解できるか不安だったが、公式サイトの歌詞を目で追いながら聴いていくと、細部はともかく込められた心情は驚くほど直截に伝わる。存在の不安、孤独、過去への追憶、未来への絶望、閉塞感。今なら安い自己愛だ「美学」だと一笑に付されそうな心情が、高い演奏力に支えられた起伏に富んだサウンドと、ハミルの時に囁き、時に喉を振り絞り、激情を迸らせる歌唱に託されて、相対化不可能な強度を持って胸に突き刺さる。巧みな音響演出も背景に置かれたメロトロンの弦も、感情表現に必要不可欠な様式なのだ。ピアノの弾き語りに寄り添うデイヴ・ジャクソンの柔らかに響くフルートがとても美しい。ロバート・フリップそっくりなディストーションロングトーンを奏でるRandy Californiaなるギタリストは何者だろう(フリップ本人?)。ハミルとバンドが一丸となり巨大なクライマックスに達するラストまで、息をつめて駆け昇る50分。アティチュードと様式が一体であることの強さを、この傑作が教えてくれる。