「野生の王国 ライブイン円盤」

8月22日(日) 高円寺円盤
出演:宮崎貴士vo,p、佐々木絵実(キキオン)acco、高木康太郎(HAYDON)b,g
前田朋昭kb,b、堀江研一ds、岸野雄一(ゲスト)vo
トーク(ゲスト秘密博士


20分ほど遅れて円盤のドアを潜る。宮崎さんの演奏は岸野雄一バンドの鍵盤奏者として何度か触れたことがあったが、リーダーとしてのライヴはこれが初めてだ。
狭い会場いっぱいに詰め込まれた30〜40人ほどの客に背を向けて、宮崎さんがアップライトピアノに向かい、歌う。宮崎さんの細く高い歌声、ピアノの繊細なフレーズと中間色の和音が、大音量では埋もれてしまうような、喜びとも悲しみとも言明できない曖昧でいながら豊かな感情を伝える。ピアノとアコーディオンがムードを支配する演奏は、ロックの喧噪を離れて、陽気な哀しみで会場を満たす。小さな円盤の中では直接に観客の耳と心に届く音楽も、街のざわめきの中では埋もれてしまうかもしれない。それでも耳をすませば、そこに淡くとも様々な色彩を感じ取ることができるはずだ。岸野雄一がゲストに加わるとその色が少し濃さを増すものの、デリケートなポップ感覚は宮崎さんとの同志的なつながりを改めて感じさせる。さりげなく確かな腕前を示すプレイヤー陣の中でも、HAYDONのベーシスト・高木康太郎の、歌に寄り添い歩幅を合わせて歩くような演奏がとても良い。その親指奏法に細野さんを連想したりした。
後半は宮崎・岸野、そしてゲストの秘密博士を迎えてのトーク。広島出身の博士だけに『はだしのゲン』の話題で始まって、とにかく博士の飛ばしっぷりが終始圧巻。「パソコン通信は禁止!」「ビデオはベータ限定!」「テレビゲームは平安京エイリアンまで!」「違反者は特高が連行!」と、自らの思春期の世代体験に世界を染め上げる恐怖政治を宣言。まさにオトナ帝国の逆襲。イ・パクサの日本デビュー秘話などタメになる情報も多く(そうか?)大変充実したトークショーであった。面白かったです。今度は足立守正さんを加えて漫画話をぜひ。
帰り際に宮崎さんに御挨拶し、夜更けの青梅街道を西へ自転車を走らせたのだった。