マグースイム『マグースイム』(98年)

吉祥寺ブックステーションで購入。千円。
蘭の花を写したシンプルなジャケットに、これもシンプルにバンド名のみを記したセカンドアルバム。アコースティック楽器の響きにこだわった(音が良い!)鈴木惣一朗のプロデュースも相俟って、実に清楚で上品な仕上がりだ。「清楚で上品」というのは、マグースイムが影響を受けた黒人音楽、および70年代R&B歌謡曲のいわゆるファンキーな乗りとは相反するようだが、実際彼等の音楽からは、ほとんど一切性愛の匂いがしない。代わりに漂うのは、昭和の都市生活者のつつましいエレガンスだ。水商売とヤンキーから離れた黒人音楽というのは、はっぴいえんど系の限界というか今一つ訴求力に欠ける気はするが、これも喫茶R&B、長髪R&B(山下達郎系)の正しい在り方ではあろう。あるのかそんなもの。30秒で「つかむ」ような音楽ではないが、そのぶん長く愛される(はずの)音楽になっていると思う。しかし野戸久嗣の声は「バス・ストップ」の平浩二のようだ。と書いて誰に伝わるのだろうか。