THE STRANGLERS/LIVE(X CERT) ('79)

105円レコード。吉祥寺ディスクユニオンにて購入。
音楽評論家かミュージシャンか忘れたが、誰かが「ストラングラーズはキーボードが入っているのでピストルズほど聴かなかった」と言っているのを聞いたことがある。極論のようだがこれは何となく理解できる。ただ、その違和感の由来はキーボードだけにあるのではない。
本作は77〜78年におけるストラングラーズのライヴ音源をまとめたものだが、この演奏の中心にあるのは、ギターでもキーボードでもない、ジャン・ジャック・バーネルのベースだ。バーネルの弾くリフは、歪みまくった音色とともに主メロと言っていい存在感を発揮し、定数倍のビートをストイックに叩くジャック・ブラックのドラムと一体になって、楽曲の骨格のほぼ全てを担う。このことによってギターの自由度が大きくなり、ヒュー・コーンウェルが絶叫しつつかき鳴らすギターは、リズムを外れノイズの発生源となる(歌もメロディから大幅に逸脱する)。そしてそれらの隙間をデイヴ・グリーンフィールドのへなへなのオルガンが、蛇のようにくねるオブリガートで埋めていく。こうして生まれるバンドサウンドは、ロックンロール・リバイバルとしてのパンクを離れ、ロックンロールの解体/再構築といった趣のものになっている。パンクのアティチュードを持ちつつ、結果的にニューウェイヴに接近したとも言える。
ところで、ストラングラーズにはかのロバート・フリップが客演しているのだが、フリップの興味もこの特異なアンサンブルにあったのではないか。その遠いこだまを後の『ディシプリン』に聴き取ることはできないだろうか。